宇宙船回収用の翼として開発された。
1970年代に始まったスカイスポーツの元祖。

搭乗者が“吊り下がった(hang)状態でグライダー(glider)に乗り滑空する”ことから、ハング・グライダー(hang glider)と呼ばれる。また英語の原音により近いハングライダー(グを1回)の発音・表記もあるが、これが誤って逆類推され、つり下がるライダーとしてhang rider のように表記されることもあるが、このような語は存在しない。そもそもライディング=乗るのではなくグライディング=滑空するものである。
ちなみに実際の発音からカタカタ英語で表現すると「ヘングライダー」となるw
 
1960年前後に宇宙船カプセル回収パラシュートの発展型として、NASAのフランシスロガロ博士が開発したロガロウイングがハンググライダーの原型。

 

日本人が世界最初の飛行人?

伝説によれば1785年岡山県の表具師、浮田幸吉が飛んだとされており、その2年後、沖縄の安里周祥が飛んだという言い伝えがある。1849年にイギリスのジョージ・ケイリーによって10歳の子供が飛んだとされるが、実用的な翼としての基礎理論と実際の飛行はドイツのオットー・リリエンタールが1895年に滑空実験を行い、その飛行理論と実績を元に初の”動力”飛行機を飛ばしたのがライト兄弟です。なので人類の飛行の元祖はリリエンタールであり、丘から滑空していたことを思えばまさにハンググライダーの元祖ですね!

 
機体は軽く20kgから35kg程度で、人間一人の力で持ち上げることができる。搭乗者はハーネスを着用してうつ伏せの状態で機体の重心位置に取り付けられたスイングラインに吊り下げられる。間違っても手でつかまってぶら下がっているわけではありません。
搭乗者は機体を持ち上げたまま斜面を駆け下りて離陸する。上昇気流を利用しながら飛行を楽しんで、(多くの場合は)山の麓に用意してある着陸場に着陸する。
離陸と着陸は全ての飛行機同様、向かい風(アゲインスト)で行う。

ハンググライダーのフライトエリアは太平洋側では海風の入る東~南西に開けた向きで設置されることが多い。日本海側では逆に北~北西~西向きに作る。このため、離陸ポイントの向きに合わない風、追い風や横風が吹いている場合は飛ぶことができない。山の風下側には乱気流と下降風が発生するので動力を持たない滑空機はこの空域に入ってはいけない。
 
離陸と着陸も向かい風で行う。追い風では凧揚げができないのと同じだ。飛行機は車と違って「対気速度」で考える。対気速度30km/hで飛行中、向かい風が30km/hあれば対地速度は0km/hである。つまり空中に停止(地上から見ると)してまっすぐ降下してくることになります。このまま180度反転して追い風で飛べば、対気速度は30km/hのまま、対地速度は60km/hとなります。自転車で20km/hで走行中追い風が20km/hあれば、タバコを吸っても煙はそのままついてきます。つまり自分の周りは無風と同じ状態です。

ハンググライダーの巡航速度は20km/hから40km/h程度で、最高速度はコンペクラスになると100km/hを越せるものもある。滑空比は7:1から14:1程度で、リジットウイングというクラスになると25:1に達するものもある。着陸のときは横風や地表付近の乱流に対応するため、最終進入時に一旦速度を上げ、高度1m以下になったら引き起こし動作によって地面と平行に飛ぶように調整しつつ、徐々に速度を落として、最後にはコントロールバーを押し出すフレアー操作により、タイミングよく機首を引き起こしてブレーキをかけて足から降りる。
 
ハンググライダーの最高峰、リジッドウイング

 
よく「いつが飛行に適した季節ですか?」という質問があるが、強い上昇風(熱上昇風)が豊富に発生し、雲低(雲の高さ)が高い秋から冬、春先までがベストシーズンである。しかし夏が飛べないわけではなく、上級者にとっては、ということで、初心者や体験飛行であれば飛びたいときが飛び頃!というわけです。え?冬?寒そうだから暖かくなってから・・・という人に限ってスキーにはいきます・・・飛ぶよりもっと寒い雪山へと・・・

 
機体は折りたたみ式で、直径40cm・長さ5mほどの棒状になる。通常は乗用車の屋根に積んで運搬する。機材は通常、飛行エリアに駐機庫があるのでそこに保管するので、自宅に保管する場所がなかったり車を持っていない人でも問題はない。飛行エリアではショップの車に乗り合いで山に上がる場合が多いので、バスや電車、バイクで来ても大丈夫です。

飛行エリアはどこでも自由に飛んで良い訳ではない。スキー場やレーシング場等と同じで管理されたエリアにおいてのみ飛行できる。離陸地点、着陸地点など土地には必ず地権者がおり、許可が必要である。飛行空域についても航空法に定められた法規を守って飛ぶ必要がある。なによりもそのエリアが飛行に適しているか、安全かの判断は経験者が何年もかけて調査しなければ開発はできない。大切なのは「自由」という言葉の意味を履き違えないことだ。
航空法上は航空機ではないので免許は不要だが、(公益社団法人)日本ハング・パラグライディング連盟発行の技能証の取得及びフライヤー登録(対人対物賠償責任保険)を義務付けている。
フライヤー本人の保険については、1960年代のハンググライダー創世記の事故率をいまだに継承し、保険業界が危険率の高いスポーツとしていることから、非常に高額な保険で誰も加入できない状態です。こういったこともハンググライダーが普及しにくい要因のひとつとなっています。(スタントマン、格闘家、自動車レースなどと同じ扱いです)
 
ハンググライダーは、構造によってクラス1からクラス5に分類されている。
同様に滑空を楽しむものには、パラシュートから進化したパラグライダー(パラパント)があり、FAI(国際航空連盟)ハンググライディングカテゴリークラス3に分類されるため、パラグライダーを「ハンググライダー」と表現しても間違いでは無いが、ハンググライダーを「パラグライダー」と表現するのは間違いであるし、パラグライダーという名称があるのでやはりパラグライダーをハンググライダーと呼ぶのは相応しくない。
いまだにパラグライダーとハンググライダーが同じものだと思っている人が多い・・・

形態や呼称がパラシュートに似ているため、安全性が極めて高い(パラシュート=安全)と誤解されてしまうが、パラシュートの構造体をグライダーに進化させたものなので、パラシュートとは全く違った特性を持っている。骨格の無い細長い翼形で滑空特性をもったパラグライダーは気流の変化に対する許容範囲がハンググライダーより狭いので、より注意深い飛行が必要とされる。

競技は日本選手権や世界選手権も開催されていてパイロンレースが一般的で、飛行距離30km~50km、海外のビッグレースになると150kmにもわたるコースとなり、どれだけ早く、指定されたいくつかのパイロンをマークしてゴールできるかを競う。この他にもアクロバット飛行を行うフリースタイル、山の斜面に沿って設置されたパイロンを高速で飛行する、スキーの大回転のようなスピードレースもある。
クロスカントリー(飛距離)では世界記録は700km以上にもなり、その時の飛行時間は9時間以上にもなる。日本国内では岡山県から琵琶湖まで210kmという記録がある。
 
2011年世界選手権大会で日本チームは世界選手権史上初の総合4位につける快挙を果たし、2014年の女子世界選手権では日本人初の優勝を果たし、2018年のアジア大会では金メダルと銀メダルに輝いたが、これを取り上げるマスコミは出場選手の地元ローカルなどごく一部という情けなさ。こういったことも日本の航空スポーツ発展の妨げになっている。事故を起こすと頼んでもいないのに光の速さでやってきて報道するが・・・